tvwar2023 visual
Daizaburo Harada
Commemorative Performance,
R.I.P. Ryuichi Sakamoto

本公演は終了いたしました。

RYUICHI SAKAMOTO DAIZABURO HARADA TV WAR 2023 10/30 mon. /2023 18:00 open, 18:30 start IDD Gallery, Tama art univ.

TV WAR 2023 Man logo

TV WAR2023

《TV WAR》は、1985年に開催された「つくば科学万博(国際科学技術博覧会)」の最終日にSONYパピリオンのジャンボトロン(25m×40m 2000インチ)を使って行われたLIVEパフォーマンスです。 コンセプトを考えた浅田彰氏の「科学をテーマにした博覧会において、戦争に関する展示がないのには違和感を感じる……」という考えのもとに、音楽を坂本龍一氏、映像をRADICAL TV(原田大三郎・庄野晴彦)というメンバーで行いました。

大型映像は、フィルムで上映するかプロジェクターを使い投影するしかなかった時代です。自らが発光するジャンボトロンは画期的で、゙現在のLEDスクリーンの先駆けとなりました。

過去、戦争の映像は“特報”として映画館で上映されるのが主でしたが、テレビの普及でブラウン管を通してお茶の間に流れるようになり、またケーブルテレビのCNN(Cable News Network)の誕生によって、24時間、ニュース映像が放送されるようになりました。それは“ニューメディア”の時代の始まりでもありました。 湾岸戦争のバクダット空爆のテレビゲームのような映像は衝撃的で、今でも記憶に残っています。

80年代は、サンプリングやスクラッチという音楽の手法がその枠内で留まらず、一つのカルチャーとして一世風靡した時代です。坂本龍一氏が「TV WAR」で創った音楽は、 YMOで創られた特徴的なメロディーを持った楽曲とは異なり、リズム中心のミニマルな音楽でした。それは、その後のアルバム《TECHNODON》の「NOSTALGIA」や《LIFE》、また《async》に繋がります。

コンピューターの世界ではフルカラー(1677万色)を出力できるマシンが少なく、マッキントッシュでは256色出力が一般的でした(そもそもビデオアウトを持ったマシンは少なく専用のボードが必要でした)。この時代の特筆すべき出来事は、音の世界でサンプリングマシンの開発で台頭してきたオーストラリアのフェアライト社が「フェアライトCVI」というマシンを発売したことです。アナログでしたがリアルタイムでビデオカメラの映像にさまざまなエフェクトを施すことかできました。 音楽も映像もアナログからデジタルへの変換期であり、さまざまなハードやソフトが生まれては消え、黎明期独特の勢いがありました。

《TV WAR》の初演から38年が経ちました。テレビから流れていた戦争の映像は、SNSの時代で手のひらのスマートフォンから流れ、またユーザーが簡単に発信者にもなることもできます。 テクノロジーの状況も一変し、生成AIの登場によりフェイクな映像が巷に溢れています。“バーチャル”と“リアル”のイメージが混在し、状況はますます混沌としてきました。 人は結局はエントロピー増大の法則に抗えないのでしょうか?(原田大三郎)

TV WAR 2023 Man logo

TV WAR

1985年9月15日、つくば科学万博──大雨のなか、当時世界最大を誇った巨大モニター「ジャンボトロン」前で、坂本龍一とRADICAL TVによって行われた伝説のパフォーマンス。コンセプトは浅田彰による。

TV WAR live performance

当時の映像をYouTubeで見ることができます。

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TV WAR 2023 Man logo

MIDEO IS BORN

今回の音づくりは新しいコンセプトでの実験だったんです。RTVがヴィデオ・アーティストの中ては音楽的な要素をとり入れてやっているので、逆にぼくはRTVのヴィデオシステムをそのまま音楽でやってみたんです。音の素材は全て具体音。ヴィデオカメラて撮影するように、テレビフィルムのかわりに、銃の音、兵器の音、爆弾音、機械音、人間の交信音などをフェアライトでサンプリングして、そこにエフェクトをかけて、スウィッチングして編集するというシステムを完全になぞったんです。

編集での基本は、やはり時間なんです。時間という方眼紙に、素材を全て並べて、ある規則性、周期性を持たせてデザインする。それはほとんど構成主義のスタイルで、そこだけ見るとミュージック・コンクレートなんです。僕の作った音の素材は全て具体音だから、そこを絵に置き換えてしまえば僕の編集したヴィデオフィルムができあがる筈です。だから編集の仕方そのものが表現と言えるんじゃないかな。

ライヴでもRTVが生カメと、用意したテープと、それにカラー・エフェクトをかけながら、スウィッチングしているように、僕も5台のON-AIRのラジオやCDを回しながら、用意されたテープと、サンプリングしてあるフェアライトやイミュレーター等をミックスしながら、ヴィデオ・スクラッチや、スウィッチングしてたんです。だから完璧にヴィデオシステムと相似形なんです。

ジャンボトロンは巨大なロボットみたいなもので僕たちは鉄人28号を動かす正太郎少年の気分でガチャガチャ動かしてた感じでしたね。RTVと僕とシャンボトロンが一つの共生システムというか一つのネットワークの中に組み込まれて、全部回路がループしているという、それ自体がもうひとつの巨大なロボットですね。

音と映像というのは従来、お互いにメタファーでしょ。一回イメージの回路を通して置き換えているわけだけど、今回はその通路がないんです。AとVの共生体と言うか、アンドロギュヌスなんですね。だから今度の音づくりを僕は〈MIDEO〉と名付けてみたんですけど。(坂本龍一)

坂本龍一氏のテキストは、DVD(2005年、発売:株式会社ファイブエース)のライナーノーツより転載しました。

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